こんにちは!!
三条製作所で主に日本剃刀を製造している神奈川県相模原市身の稲垣良博(イナガキ ヨシヒロ)です。
日本剃刀などの刃物の製造技術を学んでいます。
三条製作所は刃物製造の技術向上に尽力した岩崎航介(いわさき こうすけ)さんが立ち上げ、そこで日本剃刀の製造を始めました。
三条製作所では、棒状の鉄を地金にし、刃になる部分に鋼をつける伝統的な鍛冶技術で、職人が一丁一丁手作業で製造します。
10月の活動報告
美味しい食べ物がたくさん出てきて、とてもいい季節になりました。
今月もいつも通り仕事をしています。
前回までは鋼付けなど作業内容の説明をしていましたが、今回は基本的知識である鉄と鋼の違いについて紹介します。
まず、鉄と鋼の違いは、炭素(C)の量です。鋼は鉄に比べて、強度と靭性(粘り強さ)があります。
鋼とは、鉄(Fe)と炭素(C)の合金で炭素量が0.02~2.1%のものをいい、2.1%以上になると鋳鉄といいます。鉄と炭素の合金の鋼のことを炭素鋼といいます。
【左:鋼 右:鉄】
炭素鋼は、炭素の量によって強度と粘りを調整することができます。
焼き入れという作業をすることにより硬さが生まれ、耐摩耗性などの強度の向上をさせることができます。炭素量が高くなると硬さは増しますが、同時にもろくなり、叩いたり乱暴に扱うと鋼が割れたり欠けてしまいます。
なので、使う用途に合った炭素量の鋼を使います。
例えば、僕たちの使う金鎚などは鋼でできていますが、叩いて使うものなので、使っている途中に割れたり欠けたりすることはあってはいけません。なので、炭素量の低い鋼を使います。
また、刃物である斧や鉞なども欠けたりしてしまうと困るので、高い炭素量の鋼はあまり使われていません。
高い炭素量の鋼は剃刀やヤスリ、鉋などに使われています。
このように、使う道具の使用用途に合った鋼を使うことにより、その道具の特性を最大限引き出すことができます。
このような炭素量の違いを簡単にチェックする方法があります。
その方法は「火花試験」といい、火花を見ることによってある程度の炭素量を見ることができます。
【左から、金切鋸、鉄、金鎚、剃刀に使う鋼と同じ鋼、ヤスリ、鋳鉄】
この6つの金属の火花を見ていきます。
まずは鉄から
鉄は炭素量が少なく、雨のようにまっすぐな火花をしています。
次に鎚
炭素を多く含むものからは線香花火のような火花が出ます。
剃刀に使う鋼は、炭素量が多いので
鎚に比べてまっすぐな火花が少なくなり、線香花火のような火花が多くなります。
ヤスリも、
同じくらいの火花が出ます。
炭素量が最も多い鋳鉄は、
一気に火花が変わりこのようになります。
金切鋸は特殊鋼で特殊成分が入っていて、熱に強く、摩擦熱で温度が上がっても通常の炭素鋼に比べて焼きが戻る温度が高いので、温度が上昇しても硬さを維持できます。
金切鋸からは、赤っぽい火花が出ます。
このように、火花を見ることである程度の炭素量を見ることができます。
もし、炭素量を知りたいときには、今回紹介した火花試験の方法が役に立つでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これからも応援よろしくお願いします。
【三条市地域おこし協力隊活動ファイル#64】