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まちを耕す拠点をつくる

こんにちは。
三条市で空き家相談員として空き家の課題解決に取り組んでいる、地域おこし協力隊の佐藤芳和です。

普段は空き家相談員として市内を奔走する日々の傍ら、空き家対策・移住推進を通じたエリアの活性化を行う「一般社団法人 燕三条空き家活用プロジェクト」の事業にも携わっています。

今回は、団体が企画・設計・運営を一貫して行った第1号案件で、三条市の中心市街地に新しくできた地域の複合交流拠点「三-Me.(ミー)」についてご紹介します。

一般社団法人 燕三条空き家活用プロジェクトについて

始めに、私も活動に携わっている「一般社団法人 燕三条空き家活用プロジェクト(以下「一社」)」について、簡単にご説明します。

一社は、燕三条地域の有志の民間団体から空き家・空き地対策に知見や意欲のある人材(事業企画・不動産・設計・施工・ブランディング・マーケティングを専門とするメンバーによって構成)が集まり、2022年の晩秋に設立した団体です。
団体名そのままに、燕三条地域の空き家の流通・活用促進・管理・予防に関する啓発活動を通じたまちづくりと地域の活性化をミッションに掲げており、これまで空き家を舞台にした商店街若手人材の育成を兼ねたDIYイベントの企画・実施や、地域住民と連携し、空き家対策を啓発するイベントの企画・運営を行っています。

一般社団法人燕三条空き家活用プロジェクト(Facebook)
https://m.facebook.com/profile.php?id=100087405287721

地域の複合交流拠点「三-Me.(ミー)」について

そんな一社が企画・設計・運営を一貫して行っているのが
「三-Me.(ミー)」です。

三-Me.は、一ノ木戸商店街の三差路にある、かつて店舗兼用住宅だった空き家を
「チャレンジショップ+シェアキッチン(1F)」
「ゲストハウス(2F)」
「住戸(2,3F)」
に改修した、定住者・移住者・仲介者の三者が交わる拠点であり、私は主に全体の内装/家具設計・デザインに関わらせていただいています。

1Fは月契約・スポット利用も可能なチャレンジショップとシェアキッチン(飲食店営業および菓子製造業許可取得済)の用途で、新しく事業をしたい方や週末や平日の空いた時間に新しい試みをしたい方向けの場を提供しています。

誰かの新しいチャレンジを後押しする場であり、事業を通じて自らをリ・クリエーション (Re-Creation)=創造し直す・再定義してもらう場、というわけです。
現在、「イベント制作」「古着プラットフォーム」「フリーラウンジ」「プリンの製造・販売」「移住転職支援」の事業者が入居しています。ほかにもスポットでのカフェ出店や入居者をまだまだ募集しています。
2,3階は住居スペースとして活用しており、入居者を募集していいます。
また、2Fの一部をゲストハウスとすることで観光者向けの宿泊や移住希望者向けの短期移住体験の拠点としても運用する予定です。
1Fで移住相談をした後に2Fのゲストハウスに宿泊し、3Fの三条市民と交流してこのまちをより深く知っていただく。
そのような理想的な場にしていきたいと考えています。

三-Me. 各階の間取り

空き家利活用の仕組みの提案とその実践

三-Me.をつくるプロセスには、空き家と利活用希望者のマッチング活動をするなかでの感じた気付きを解決するための提案が含まれています。

マッチング活動をするなかでネックと感じることの一つに、老朽化による「改修の必要性」と「改修費」の問題があります。
いくら空き家バンクで立地や条件に合う物件に巡りあってもその点がネックとなり、マッチングに至らないケースも多くありました。
三-Me.では以下のようなプロセスを経ることで、新たな空き家利活用の仕組みと活用の事例を提案しています。

①改修費をオーナーではなく、借主の負担とする
②改修費を負担する代わりに定期借家で長期間かつ賃料を相場よりも抑えて使わせて頂く
③契約終了後、資産価値が向上した状態でオーナーへお返しする

最初から大きく改修することはリスクがあるため、小規模な投資によって事業を始め、徐々に収益が出てきたところで追加の投資を行い、老朽化する建物をメンテナンス・ケアしていきます。
オーナー側にとっては手放す予定がない、あるいは、手放しがたい所有物件を代わりにメンテナンスしてもらえ、
借り手(三-Me.においては利用者)側にとっては、ある程度の固定費を抑えながら新しい事業を理想の状態で始められるという、win-winの関係となる仕組みです。

三-Me. 1F改修前
三-Me. 1F改修後
三-Me. 1F改修後

都市はスポンジ化する

ここまで一社の取り組みと三-Me.の紹介とできるまでのプロセスをお話ししてきました。

では、行政が空き家対策を行っているのにもかかわらず、なぜ空き家対策のための民間団体を立ち上げたのか。

人口減少社会ではコンパクトシティ(※1)と言われる都市機能や居住範囲を集約する都市像が望ましいと考えられていますが、そういった考えとは裏腹に人はそれぞれの人生の都合にあわせて家や土地を使ったり・使わなかったりします。

その結果、まちの至る所に空き家や空き地が増えていき、都市のサイズはそのままで密度が下がる現象を「都市のスポンジ化(※2)」と饗庭伸(あいば しん)(※3)氏は指摘します。
都市=スポンジ
都市に発生した空き家・空き地=スポンジの穴
と見立てています。

スポンジ化を引き起こす要因は個別具体的なものであり、行政が行う空き家対策だけではリソースやスピードの面で限界があるため、行政という一つの主体に頼りきるのではなく、民間の事業者や地域住民など複数の主体で取り組むことが重要になってきます。

※1.コンパクトシティ:居住・都市機能をまちなかの拠点や公共交通沿線等に集約し、人口密度が適度に維持された市街地の形成を目指すこと
いずれも『都市計画基本問題小委員会 中間とりまとめ「都市のスポンジ化」への対応 』平成29年8月 都市計画基本問題小委員会より

※2.スポンジ化:都市の内部において、空き地、空き家等の低未利用の空間が、小さな敷地単位で、時間的・空間的にランダム性をもって、相当程度の分量で発生する現象

※3.饗庭伸:東京都立大学教授。博士(工学)専門は都市計画・まちづくり

「都市のスポンジ化」のイメージ 出典:饗庭伸『都市をたたむ』(花伝社 2015)

空き家を通してまちを「自分事」として考える

これまで成長が当たり前だった時代では道路などのインフラ整備や開発なども盛んに行われ、まちをどんどん成長させていく時代でした。

一方で現在は人口も税収も減り、限られた予算をいかに効果的に配分するかを考えなければならないため、これまでのように何もしなくてもまちや身の回りの問題が解決するような他人任せ・お客様的な考えでは立ち行かなくなります。
そういった状況では、いかにまちや身の回りの事を「自分事」として考えることが必要であり、その第一歩として「どのようなまちに住みたいか」を考えることが大切になります。
しかし、「都市のスポンジ化」現象には、「人が自分事としてどのようなまちに住みたいか」を考えやすいといった特徴を持っています。

まちを耕す、「受け皿としてのスポンジの穴」と「仕事/暮らしを生み出す拠点」

スポンジ化する都市には、
①「ゆっくりと変わる」
②「個人が変える」
③「小さな規模で変わる」
④「様々なものに変わる」
⑤「あちこち(ランダムな場所)で変わる」
といった特徴があります。

その特徴をいかせば、個人個人が望む理想の暮らしを実現していくことにつながり、スポンジ化するまちをより良い場所へ変えていくことができると考えています。
そして、三-Me.は「誰かの新しいチャレンジを後押しする」という考えのもと、そのキッカケを提供する場と言えます。
例えば、ここでの事業が成長・軌道に乗ったタイミングで三-Me.を卒業し、個別で店舗をオープンする。
例えば、観光でゲストハウスへ宿泊した方が三条に魅力を感じ、移住を決める。
そして、一社はそれらの受け皿となる空き家・空き地(=スポンジの穴)を少しずつ掘り起こしていき、まちを耕すように一つ一つ埋めていく。それが一社の実践と三-Me.の役割というわけです。

一人のスーパースターではなく、いくつもの小さなスターを輝かすこと。
ここで芽吹いた活動の芽(me)がこの地に根付き、それらが交錯し、組み合わさることで、meaningfulなより良いまちをつくりあげられるのではないでしょうか。
「一社」と「三-Me.」の活動はまだまだ始まったばかりですが、ぜひ多くの方に興味を持っていただければ幸いです。

プロジェクトメンバー 「三-Me.」2/12お披露目式にて

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