「人とのつながりこそ豊かさ」 東京から三条へIターン移住した久田さんファミリーが見つけた幸せのカタチとは
「いま思うと、東京での生活はストレスフルな状態が日常でした」
こう語るのは、2024年4月に東京から新潟県三条市に移住してきた久田剛寛さん(37歳)。長年、東京で暮らしてきた剛寛さんは、妻の美里さん、4歳と1歳の息子二人と共に三条市にIターン移住し、新生活を始めて半年が経ちます。
移住のきっかけは、都内での堅苦しい子育て生活から脱却したかったから。現在は自然に囲まれた環境で子育てをし、心身ともにリラックスしながら充実した生活を送っています。気になるのは、Iターン移住に不安はなかったのか? ということ。剛寛さんにその本音を伺いました。
自然と人の温かさに触れる移住体験に感動
剛寛さんファミリーは、移住前は都内のマンションに住んでいました。元気いっぱいな子どもたちが騒いで迷惑をかけないようにと、隣人に気遣う日々……。子どもたちは家のなかにいても常に行動を制限しなければならない状況でした。
「伸び伸びとした環境で子育てをしたい」こう考えた久田さんは、2023年夏ごろに前向きに移住を検討します。妻の美里さんが新潟県魚沼市出身ということもあり、移住先は新潟県内に決定。当初、三条市は移住先候補ではありませんでしたが、キャンプ場「Snow Peak」に宿泊するファミリー向け移住体験モニターツアーに参加したことで、まちの印象がガラリと変わったといいます。
「三条市は『職人のまち』なので、頑固で冷たい人が多いという先入観がありました。ですが、移住体験のなかで地域の人たちと交流することで、温かい人柄かつアクティブに活動する人たちが多いことがわかったんです」
「移住するならここしかない!」と心が決まった剛寛さん。さっそく移住するための準備に取りかかりました。
移住の準備期間はたったの6カ月間!
剛寛さんファミリーの移住準備期間はたった半年間でした。2023年の秋に移住を決め、2024年4月には新生活を始める計画で進めなければなりません。
当時、剛寛さんは人材サービス会社の人事を担当しており、仕事の引継ぎはスムーズに終えられました。また、息子二人の保育園は、三条市の移住コーディネート業務を担う「きら星株式会社」の担当者に情報をもらい、入園先候補を決めました。家族が住む家は移住促進住宅※に希望を出し、保育園が始まる1カ月前に入居が決定しました。
「想定外だったのは、移住のための費用が約200万円かかったことです。内訳は車代が約100万円、引っ越し代が約30万円、家具や必要物品の購入で約70万円。都心から移住する場合、ある程度の蓄えが必要だとわかりました」
都会から地方暮らしへ、子どもたちの変化とは?
現在、剛寛さんファミリーは、三条市の市街地から少し離れた下田地域の一軒家で暮らしています。集落は25世帯ほどで、周りを山に囲まれた自然があふれるのどかな場所です。
「隣の家まで200メートル離れた環境なので、子どもたちは走り回るのも大声を出すのも自由です。近くの山で遊んだり、虫捕りをしたり、伸び伸びと過ごしています。東京では有料の施設で遊ばせることが多かったのですが、ここでは自然が最高の遊び場になっています」
地域の人たちとの関わりができたことも、子どもたちにとって良い影響を与えています。
「地域の方々が運営している直売所へ野菜を買いに行くのが、週末の楽しみになっています。子どもたちは農家のおじいちゃんたちと会話し、仲良くなって嬉しそうです。心なしか移住してからは子どもたちの100%の笑顔を見ることが増えたなと感じています」
東京に住んでいた頃は、防犯対策として「むやみに知らない人に話しかけてはダメ」と無意識に教育していたという剛寛さん。しかし、移住地である下田地域においては、周囲の大人はまるで遠い親戚のような存在です。子どもたちは自然と周りの大人に話しかけるようになり、社交的な性格に変わったと感じているそうです。
「ちょうどいい田舎」だから叶う休日の過ごし方
三条市といえば「ちょうどいい田舎」が魅力のひとつ。新潟市や長岡市などの商業地には車で約1時間、東京まで新幹線で約2時間というアクセスの良さも魅力です。剛寛さんファミリーは、妻・美里さんの実家である魚沼市を訪れるほか、ショッピングセンターなどへ車でドライブがてらおでかけを楽しんでいます。
東京に住んでいた頃は、遠出するときは電車などの公共交通機関を利用していたので、小さな子供たちを連れて行くのは大変だったそう。車での移動は心身の負担が少なく、さらに「移動中の車内での、妻との会話も楽しみのひとつです。以前はお互い忙しくてゆっくり話ができなかったんですよ」と顔をほころばせます。
三条市から少し足を伸ばせば、魅力的なアクティビティは多数ありますが、剛寛さんはこのまちで過ごすだけで十分満ち足りていると話します。
「東京で暮らしていた頃はよく遠征キャンプをしていましたが、いまは毎日自然に囲まれているので頻度は減りました(笑)庭でバーベキューを楽しむだけで満足です」
さらに、三条市は県内でも屈指のイベントが多いまち。夏祭りや伝統の凧合戦など地域行事のほか、マルシェやスポーツ体験会など、週末ともなればあちこちであらゆる催し物が行われており飽きることがありません。
Iターン移住でも「地域とのつながり」はつくれる
知り合いゼロでIターン移住してから、早半年。現在、自身の移住をサポートしてくれたきら星株式会社にジョインし、三条市へ移住を検討する人たちの相談に乗る業務を担当しています。かつては「初めての土地で地域になじめるか」と心配していたのが嘘のように、いまは多くの楽しい仲間たちに囲まれ、日々の生活を楽しんでいるそうです。また、仕事に対する考え方にも変化が生まれているといいます。
「東京に住んでいた頃は、組織のなかで評価されるために懸命に働いていました。でもいまは家族のために自分のために仕事をしている感覚があります」と話し、充実していることを教えてくれました。
そして「Iターン移住でも地域に溶け込めたのは、三条市の土地柄が大きいです。それに私自身が、受け身の姿勢ではなく積極的に関わりをつくっていきたいと考えていたことも関係していますね」と話します。人と人とがつながりやすいこのまちの良さを噛み締めており、東京の生活とはまた違う豊かさを感じているとのこと。
剛寛さんファミリーの三条生活はまだ始まったばかり。これからもきっと新しい出会いや発見が待っていることでしょう。