創ったのは料理×アートを楽しむ交流の場。もっと三条を楽しくしていきたい!【移住者インタビュー】
三条市元町の歴史的建造物を改修した飲食店兼アートギャラリー「メゾン伊とう」のご主人、伊藤雄一さんは山形県新庄市の出身。山形県や東京を舞台に、主に雑誌や書籍の編集者、マーケティング分野でキャリアを重ね、まちづくりNPOやワインバーの運営も経験してきました。
昭和の歴史を感じさせる空間では、お客様が絵画に囲まれ、美味しい料理に舌鼓を打ちながら、おだやかに語らいを楽しみます。そこかしこにアート作品があり、ときには地元のクリエイターもテーブルで笑顔の輪に加わります。今回は、そんなお店を創りあげた伊藤さんに移住のきっかけから三条市の魅力、今後の目標までお話をうかがいました。
運命的だった歴史的建造物との出会い
小さい頃から絵を描くことが好きだった伊藤さんは農業高校の出身で、卒業研究に蕎麦を選ぶほど食と料理が大好き。動画配信や、クリエイター、ミュージシャンなどをサポートするアプリケーション開発を行う東京の企業で、マーケティングと広報を担当していました。しかし、会社に誘ってくれた上司の退職を契機に会社員生活をやめ「食とクリエイティブを組み合わせた空間を自分自身で創造し、直接作家と交流できる場所を運営しよう」と決意します。新たな刺激を求めて地方都市での出店を考え、静岡や鹿児島にも下見に行きました。その頃、知り合いだった新潟県の関係者から移住支援を行う会社「きら星」を紹介され、そこで「起業なら三条市にぴったりではないか」と、1年任期の起業型地域おこし協力隊「TryAnd.プログラム」を勧められます。
「もともと新潟県出身の友人たちがいたことや、高齢の両親が暮らす実家の山形にも近いことがあり、三条市・下田地区で地域おこし協力隊の活動を行うことを決めました。山形に似て、山が近くて落ち着きました。新潟と山形では山菜など食べるものも似てるんですが、すこし違う在来品種などがあって、それを見るのも楽しかったです。TryAnd.プログラムは経済的な支援もしっかりしていて、余裕を持って様々な取り組みができました」
伊藤さんは下田地区での活動中に、地元の企業とクリエイターを結び付けたオブジェ制作のプロジェクトや、下田の食材を使ったフードコーディネートなど、実績を重ねていきます。
「協力隊を卒業したあとどうしようか考えているときに、三条市の空き家バンクで歴史的建造物の旧渡辺医院を知ったんです。訪れてみると、そこにはかつての住人だった医師・渡辺善二郎さんが描いた、素朴で味わいのある絵が残置物として残されていました。自分も絵を描くし、いままでの人生で培ったことや、ギャラリーと飲食店をやりたいという思いに、合致する出来事でした。そこで、この建物でお店を開くことを決めました。もしかすると善二郎さんに呼ばれてしまったのかもしれませんね(笑)」
新しい友人たちと創ったお店を文化的交流の場に
伊藤さんは店舗の改修に「三条市中心市街地空き家改修事業等補助金」を利用しました。協力隊での活動中に制度の紹介があり、さらに「燕三条空き家活用プロジェクト」の人たちの話も聞いて決断したそうです。協力隊として地域で活動するうちに、サポートする側・される側といった垣根を超えた人間関係が構築され、たくさんの知り合いや友人ができていきました。
「いままでの自分にとって、そんなに縁のないまちに移住してきて、人間関係をまた作っていくことは、より客観的になれるし、面白いことだと感じました」
伊藤さんは2024年3月に協力隊を卒業してから準備期間の8カ月を経て、11月にお店『メゾン伊とう』をオープン。珍しい昭和のガラスが残る店内は歴史を感じさせる趣があります。そして、三条で巡り合った友人たちがDIY精神を発揮して、壁塗りなど修繕を手伝いました。ギャラリーのアート作品に囲まれながら、リラックスしてお酒や料理を楽しめる空間となっています。お店を運営する手ごたえについて、伊藤さんは語ります。
「自分が選んだ飲み物や、作った料理を美味しいと言われるとうれしいですね。店内も味わいがあって居心地がいいと、気に入ってくれるお客様もいます。交流のある人たちが集って、新しい文化的ななにかが始まる、サロンのようなお店にしたいですね」
出会いがあるまちで可能性を追及します
伊藤さんは、三条市について多面性がありパワフルなまちだと考えています。
「産業のまちの側面もあれば野山もあり、食べ物も美味しく東京からのアクセスがいい。昔ながらの技術も最先端の技術も共存していて、エンジニアや職人が多い印象があります。そういえば、鍛金作家のトレーを手に取って、それを利用していたら、その作家さんが同じ地域に住んでいることがわかったことがあり、出会いがある土地だなと、縁みたいなものを感じています。今後はこの店を安定させながら下田地区で協力隊員をしているときに手がけた企業とのプロジェクトを前進させ、クリエイターの作品や見本の展示など、可能性を追い求めていきたいですね」
最後に、移住を考える人へのメッセージをいただきました。「三条には、メゾン伊とうをはじめ楽しい飲食店がたくさんあります。これからもっと三条を楽しくしていきたい、と思います。一緒に楽しくしていきましょう!」
いままでの人生で育んできた思いやスキルが、見知らぬ場所で出会った建造物により、ひとつの未来となって結実する。そんな経験をされた伊藤さんのお店にはアート作品や様々な告知のポストカードも置かれ、地元のクリエイターの団らんと交流の拠点になる可能性を秘めています。そこからまた、地域を元気にする新しい発想が生まれてくるのかもしれません。興味がある方はぜひ一度、お店を訪れてみてください。
小料理屋兼アートギャラリー「メゾン伊とう」
三条市元町1-17
木〜土:18:00-23:00
日:15:00-21:00
電話 090-4885-8249
★伊藤さんのおススメメニュー
・ビールやワインにぴったりな、鶏レバーと豚ひき肉を使った田舎風パテの「パテドカンパーニュ」。
・鶏むね肉にたっぷりの小麦と玉子をまとわせ大量のバターでじっくり焼いた「ソスタンツァ風とりバター」。こちらは白ワインによく合います。
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